次世代型マンホール蓋に関する技術マニュアルの発刊~改訂

維持管理性および安全性向上を目的とし、2007年に「次世代型マンホールふたおよび上部壁技術マニュアル」(公益財団法人 下水道新技術推進機構)が発刊されました。しかし、マンホール蓋を取り巻く環境は過酷化しており、さらなる安全性の向上やアセットマネジメントへの貢献が求められていることから、2024年に技術マニュアルは「アセットマネジメントの実践に向けた次世代型マンホール蓋技術マニュアル」として改訂されました。 本マニュアルでは、マンホール蓋に求められる広義の安全性能8項目※1をもとに今後のアセットマネジメント視点での課題を解決するために必要な性能レベルが再定義され、設定されています。

※1 マンホール蓋に求められる安全機能8項目とは、社団法人 日本下水道協会(現公益社団法人 日本下水道協会)より発刊された「下水道用マンホール安全対策の手引き(案)」に記載されているマンホール蓋の安全性能項目。マンホール蓋は管路施設と道路環境の一部という二つの側面があるため、広範囲な安全上の配慮が必要になることから定められた。

マンホール蓋に求められる安全性能

2024 年に改訂された次世代型マンホール蓋の技術マニュアルでは、信頼性設計の考え方を参考に、初期状態、限界状態における基本的な要求性能をそれぞれ初期性能、限界性能として定めており、蓋の設置時から設計供用期間(30 年)経過時に至るまで、安全面や維持管理面、豪雨など災害時にもで要求される各性能を満足させる必要があります。そのため、性能設定にあたっては、蓋設置時の初期状態に加え、摩耗や腐食等の30 年経過時の蓋の劣化状態を想定した限界状態を設定しています。

耐がたつき性能

安全な車両通行を阻害する蓋のがたつき・飛散および周辺環境に影響を与えるがたつき騒音の発生を防止する性能

要求性能
初期性能 蓋の両端に、蓋の呼び径および耐荷重仕様によって定まる所定の荷重を所定の載荷面積に加えた際の蓋揺動量が基準値以下であること
限界性能(耐用年数経過後) 輪荷重走行試験もしくは同等の促進試験において、限界状態を想定する規定回数までにがたつき音の発生、もしくは急激な揺動量の増加が無いこと

耐荷重性能

蓋上への車両の乗り入れの繰り返し負荷に対して破損せず、たわみにより車両通行を阻害しないために求められる性能。

要求性能
初期性能 発生応力度 235N/mm2以下
限界性能(耐用年数経過後) 発生応力度 420N/mm2以下

耐スリップ性能

雨天時等のスリップしやすい路面環境においても、二輪車等がスリップによる転倒の危険や心理的不安を感じることなく蓋上を通行できるための性能。

要求性能
初期性能 すべり抵抗値:0.60以上
限界性能(耐用年数経過後) すべり抵抗値:0.45 以上

※濡れたアスファルトのすべり抵抗値は0.45~0.60

圧力解放性能

大雨、豪雨時に下水道管内の内圧が上昇する際に、マンホール内で急激に上昇した内圧を解放し、重交通環境下での車両通行による過剰食い込みを原因とした蓋飛散や舗装隆起等を防止する性能。

要求性能
初期性能

荷重試験機によって予荷重として10回載荷し、蓋の食込みを発生させ、浮上試験機で送水速度3㎡/min以上を目安に送水し、圧縮された空気により蓋が圧力解放されること

限界性能(設計供用年数経過後) 耐がたつき性能の輪荷重走行試験において、103万回(30年相当)走行後の開蓋時に、蓋裏中心に油圧ジャッキ等で荷重を与えた際、蓋が開放する反力の最大値が0.1MPa相当の荷重(0.1MPaに蓋の面積を乗じて算出される換算荷重)以下であること

防食性能

項目 性能
防食性能

マンホール蓋に防食表面処理を施し、pH1の硫酸水溶液に72日間浸漬後、中性水溶液に14日間浸漬したとき、目視による赤さびが確認できないこと

使用環境を想定した防食性能 マンホール蓋に防食表面処理を施し、蓋の開閉操作時にちょう番に生じる負荷で傷がついた場合でも、pH3の硫酸水溶液に72日間浸漬し、一般塗装と比較した際に溶出する鉄イオン量が1/2以下であること

硫酸水溶液浸漬状況