変化する設置環境への対応を背景に性能規定化の進展
構造物の材質や寸法、工法を具体的に規定する「仕様規定」に対して、使用者から要求される性能とその照査方法を規定するのが「性能規定」です。
マンホール蓋が置かれる設置環境は時代とともに激変しており、特に交通量の増加や車両の大型化、集中豪雨の頻発といった問題について、対応が求められるようになってきました。市民の安全を守るということが自治体とメーカーの責務である中で、こうした問題に対応する新しい機能が付加されたマンホール蓋を導入しやすいよう、性能規定という考え方が採り入れられ、現在では約8割の自治体に導入されています。
.
長期にわたる「安全性能の確実性」と「経済性」の向上を図る「高品位性能規定」
性能規定化の気運の高まりを受け、当協会では(公財)日本下水道新技術機構の「次世代型マンホールふたおよび上部壁技術マニュアル」でとりまとめられた要求性能や試験方法に基づき、設置初期の性能だけでなく、時間経過とともに変化する状態までを想定した「限界性能」が確保される性能基準と検査方法を規定化しています。
高品位性能規定の内容とJSWAS G4規格との比較
高品位性能規定は、「次世代型マンホールふた及び上部壁技術マニュアル」に基づき、以下の性能項目を規定しています。
高品位性能規定をご検討いただくにあたり、詳細な説明や支援をご要望される場合は、技術説明会をお申込みいただくか、当協会へお問合せください。
.
下水協規格(G4)と下水道新技術推進機構技術マニュアル(次世代型)の性能比較
安全性能項目 | JSWAS G4規格 | 次世代型マンホールふた及び 上部壁技術マニュアル |
|
蓋の圧力解放耐陽圧性能 | マンホール内の圧力により、20mm以下の高さに浮上して圧力を解放し、浮上状態においても車両通行により解錠しないこと。及び、内圧低下後には、蓋が枠に納まる構造とすること。 | 大雨や豪雨時の下水道管路内の圧力上昇に起因する突発的事象に対しても、その圧力を確実に解放する機能と浮上する蓋の姿勢を制御できること。 | |
圧力解放性 |
- |
試験荷重210kN(120kN)を繰り返し10回載荷後、圧縮空気試験により蓋の食込みが0.1MPa以下で圧力解放すること。 | |
耐揚圧荷重強さ | 錠強度:60kN~106kN | 下限:浮上開始圧力の2倍(67kN※)以上 上限:枠緊結ボルト保証荷重106kN未満 蓋裏面からの荷重が錠及び蝶番の両方に加わった時、破壊荷重の下限が圧力解放時内圧規定値の2倍(0.2MPa)以上、上限が受枠緊結ボルト強度106kN以下であること。 |
|
浮上高さ (=浮上しろ) |
20mm以下 | 20mm以下 圧力解放の浮上状態で受枠に対する蓋の浮上量が20mm以下であること。 |
|
圧力解放後の蓋段差(水平設置) | 10mm以下 | 10mm以下 水平に設置する場合に、圧力解放後に蓋が枠に収まった状態で、枠に対する蓋の段差が10mm以下であること。 |
|
蓋の支持構造及び性能 【がたつき防止性能確認試験】 |
蓋と枠の支持構造は、蓋と枠の接触面を機械加工した急こう(勾)配受けとし、外部荷重に対し、がたつきを防止できること。 | 車両の走行に対し、危険な揺動・がたつき現象をおこさず、がたつき防止性能を有すること。 (初期) 荷重試験機にて製品上の直径方向両端に交互荷重70kNを加えた際、揺動量0.5mm以下であること。 (限界) 移動荷重100kNの輪荷重走行試験において50万回までがたつき音、もしくは急激な揺動量の増加が発生していないこと。 |
|
荷重強さ | 発生応力 |
- |
(初期) 衝撃荷重140kN(80kN)を載荷した時に発生する応力が、蓋の材料の許容応力235N/mm2以下であること。 (限界) 初期寸法から1.0mm減肉させた製品に衝撃荷重140kN(80kN)を載荷した時に発生する応力が、蓋の材料の耐力値420N/mm2以下であること。 |
たわみ | 2.2mm以下(試験荷重 T-25:210kN、 T-14:120kN) |
2.2mm以下 (試験荷重 T-25:210kN、T-14:120kN) | |
残留たわみ | 0.1mm以下(試験荷重 T-25:210kN、 T-14:120kN) |
0.1mm以下 (試験荷重 T-25:210kN、T-14:120kN) | |
耐荷重 | 試験荷重がT-25:700kN、T-14:400kNにて割れ又はひびのないこと。 | 試験荷重がT-25:700kN、T-14:400kNにて割れ又はひびのないこと | |
車道の耐スリップ性能 | - | 雨天時等のスリップしやすい路面環境においても、二輪車等がスリップによる転倒の危険や心理的不安を感じることなく蓋上を通行できること。 (初期) 表面粗さRa3以下の供試体で、ASTMに準拠しているDFテスターR85による60km/h時の動摩擦係数が0.6以上であること。 (限界) ふた表面の模様高さが車道部設置15年間に相当する3mm磨耗、表面粗さRa3以下の供試体でASTMに準拠しているDFテスターR85による60km/h時の動摩擦係数が0.45以上であること。 |